GM破綻

「こと遮音にかけてはトヨタは世界でも有数の技術を持っていますから」と『1Q84』の第一章でタクシー運転手に語らしめたトヨタのクラウン・ロイヤルサルーン

「いつかはクラウン」はトヨタのCM。「いつかはキャデラック」は米国人の夢。
先週、そのGMが破綻。

故障の少なさで米国市場で人気のあった日本車、日米貿易摩擦の解消に向け、ホンダが日本のメーカとして始めて北米に工場を建設したのが、たしか、1984年頃。繊維、造船、鉄鋼、TV、自動車と貿易摩擦のニュースは1970年頃から新聞紙上で話題になっていて、日本製品ってけっこう優れもんなんだと、ちょっと誇らしくもあり、一所懸命いいものを作れば、誰もが豊かになれるんだ、そんな明るい空気が、あの頃の日本には漂っていた。『ジャパン・アズ・ナンバーワン 』って本が話題になったのもその頃だったし。

定期預金金利は7%を超え、会社は希望退職なんて募っていなかったから、銀行にお金を預けて、定年まで勤めるつもりで働く事を当たり前と信じていた人が大勢いた時代。

そして、現代のアメリカ。
支払い能力の無い人にも自動車ローンを組ませて、そのローンはサブプライムローンと同じ仕組みで優良債権として世界中にばらまいちゃって、ところが、この不景気でローン返済できなくなった債務者が激増。全米での売り上げの1/7に相当する190万台の車が差し押さえられ(夜中に車の鍵をこじ開けて、レッカー移動するシーンには驚いた!)、中古市場で売りさばかれるのだとか。

まぁ、これじゃGMの新車は売れないし、売れない物は作れないし、作るものが無ければ人は雇えないので、北米での失業者はまだまだ増えていくのだろう、という事は想像がつく。

それにしても、25年経って、車に対するイメージも随分変わった。
都心で暮らしていれば、車なんて駐車場代と保険代と税金を喰うだけの粗大ゴミ、地下鉄まで徒歩数分の都市住人にとっては無用の長物。僕が会社に入って欲しい物は断然「車」だったのに、今年の新入社員の諸君に聞いたら、「欲しい物はありません、趣味は貯蓄です」だって。隔世の感ありとは、このことか。

GM破綻』はベルリンの壁崩壊に匹敵する時代の変換点とのちに記憶されるはず、と日記には書いておこう。