怠け者のあなたに勧めたい芥川賞作品

「仕事するのって、やじゃやないですか?」
とあるマイミクさんに言われた事がある
そうだよね、と相槌打ちながら、通勤も責任も仕事も放り出したら楽だろうなと自分も思っていた。

本当は自分って怠け者でダラダラと過ごしたいのが本性なのじゃなかろうか
もし、そんな気持ちになった事があるのなら、芥川賞を取った本谷有希子著「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」を手にとってみるのをお勧めする。

前の妻とはカッコつけて疲れて別れて、君には本当の俺を見せたいとの言葉に喜び、持ち家ありのこの男と結婚し楽な専業主婦生活に飛びついた妻が物語の主人公

俺は家では何も考えたくない男だ、と宣言し一日三時間、食事と晩酌しながらバラエティ番組を飽きずに眺めている夫。

夫いわく、「サンちゃんも俺とおんなじでしょ。本当は何にも考えたくないのに、考えるふりなんかしなくって、いいじゃない。俺も君も大事な事に向き合いたくない。だから一緒にいると楽」

怠惰な夫はついには会社を辞めてしまう

この小説はなんのために書かれたのか?

魂を削りながらちゃんとした小説を書かなければいけないと信じていた著者が、「そもそも私には削るような魂があるのかな。」と思い始め、「ちゃんとしてない小説」をちゃんと書いてみた、というのがこの作品

小説をエンターテイメントのひとつと捉えれば、こんな小説だって受け入れている読者がここにいる。

石川県出身の本谷有希子氏、高校生の頃近くにショッピングモールが出来、ウィークデーにバイトし週末にもそのモールで遊ぶ、そんな生活に疑問を感じ、劇団員となるべくあてもなく上京。その後、脚本家となり自分の劇団を持つに至る。

36歳の著者は就職氷河期よりも後の世代で、物心ついた時にはインターネットが当たり前、経済的には低迷していると言われている日本で暮らす一児の母。

この小説の主題は、夫婦が同化していく事への違和感
その様子が幻想的な表現を交えて描かれている

この小説の結末はいかに?
思いもがけぬフィニッシュに頬がゆるんだ

そして、仕事が嫌だと言っていたそのマイミクさん、若かった彼も管理職となり、人に働いてもらう立場になったとの事

働きの悪い部下をどうたしなめているのか
今度聞いてみることにしよう(笑)