台湾企業に乗っ取られる日本のエレクトロニクスの老舗


台湾の会社が日本のエレクトロニクスを乗っ取る、そんな事あっていいのかよ?と声を荒げる彼の手にあるのはiPhone

彼のiPhoneはその台湾の会社で作られていて、彼も含め世界中の多くのiPhoneファンがその台湾の会社の業績を支えている事に彼は気がついてない。ホンハイという名のその会社は、EMS(受託製造業)と呼ばれアップルを初め世界中の電機メーカから設計はせず製造だけを請け負う。

製造請負というと、なんだか図面もらってその通りに作っているだけと思われがちだけど、実態は部品調達、商品の物流、品質管理と、製造業のあらゆる機能を網羅していて、その圧倒的に大きな購買力により部品サプライヤへの発言力は極めて大きい。

このようなEMSが登場したのは1990年代後半、日米の電機メーカが工場を手放し、あるいは低賃金労働を求めて中国に進出した頃。中国において経済の開放政策が進み、深センを中心に外資の工場誘致を進み、ホンハイもその波に乗り急成長を遂げた。即断即決のオーナー経営者の元、従業員数100万人、売上10兆円の巨大企業となった。

電子機器の付加価値がソフトウエアと半導体にある事を知るスティーブ・ジョブズは、iPhoneの製造は自社では行わずEMSを利用する事で固定費を削減し、デザインや使い勝手といったよりユーザに近い技術での差異化を図りiPhoneによりスマートフォンという市場を作り上げた。

一方、日本企業の技術流出を防ぐために日の丸連合を組んで外資系企業からの乗っ取りを防ぐべきと主張する人達もいる。

しかし、日本企業同士が合併して、間接費を減らすためのリストラや工場の集約による雇用を減らした所で、結局、市場で競争力のある商品が生み出せなければ、そして販路が開拓できなければ、企業は赤字となり、その企業を縮小していかざるをえない。

そして縮小した企業を去り、外資に転職する技術者達が増えてしまえば、技術の流出を防いだ事にはならいのではないかと思う。

そう考えると、例え買収するのが外資であったとしても、その外資に販路を開拓できるだけの力があり、研究開発に投資できるだけの資金が調達できるのであれば、むしろ外資の元で企業の再生を図ったほうが従業員にとっては幸せなのだと思う。

無論、ビジネスの世界は流動的だし、外資に取り込まれる事が企業の再生を約束するわけではない、だけど、今の段階で、企業再生のアイデアを次々と出してくる、そのグローバル外資の方が、国益(?)だけを錦の御旗に掲げる日本の機構に比べ、先見性があるようにみえる。

どちらが、その老舗を救済するのか、まだ決まった訳ではない

とはいうものの、修羅場をくぐり、采配を振るってきた経営者の経験こそが今の日本企業の再生に必要とされているのだと思う

iPhone片手のその友人には分かってもらえなかった、グローバルな経済の動きというのはそういうものだという事が。

でも、こんな話、分かってもらえない
そりゃそうだ、ホンハイなんて聞いた事もないのに、自分にとって身近な老舗企業が買収されてしまうのは、やりきれないもの