スクラップ・アンド・ビルド 芥川賞受賞作書評二冊目

「火花」に比べ、主題が「介護」と自分も関心があるテーマだったので、「スクラップ・アンド・ビルド」の方が面白かった

介護が必要な祖父と母と主人公健斗の三人ぐらし

肉体的にはさほど悪いところも無いのに母(実の娘)に甘える祖父
介護に苛立つ母のきつい言葉が祖父に刺さる

杖をつき外出もままならない祖父の安楽死願望の協力をしようかと考えた主人公だが、祖父と接しているうちに、その本音が違うところにある事に気がつく

主人公自身は新卒で勤めたカーディラを5年で辞め再就職先探しのための面接と行政書士になるための自習を続けている

デイサービスを利用した時の老人ホームでの介護師達の対応は、入院者の自立を促すよりも、むしろ怪我などされては迷惑だからと、車椅子に縛り付ける介護になりがち

要介護の指数が上がる事が施設の経営上には必要なこと、だったりとか

介護の現場を垣間見る描写もなかなか興味深かった

残りわずかな余生をいかに生きるべきか、という話と、30歳と若い主人公が祖父と向き合いつつ、自らの身体を鍛え、心の健康を取り戻していく話とが対照をなしていて、読みやすい

小説の良し悪しって、結局の所、読者の個人的な関心と合うか合わぬか、それだけのこと。

まぁ一読者として小説を楽しんでいるのだから、それでいいのだろう