芥川賞受賞作「火花」とイタリアびいきの塩野七生

芥川賞受賞作「火花」感想文

又吉直樹という芸人の名前は知ってはいたけど、どんな漫才をやるのかは記憶に無い。お笑い番組を見ないから、というよりあまりにも次々と新しい芸人が登場するので覚えられないからと言ったほうが正しいか。

かつて漫才がブームとなり、さんまやたけしがブラウン管を賑わせていた時代には、ひとりひとりの芸風もなんとなく分かってはいたのに。

作品そのものは描写も丁寧で読み味の良い小説
漫才のネタを20も散りばめておけば、ひとつの小説がかけると芥川賞選評の中で島田雅彦氏が述べていたが、確かに、新人漫才師達の奮闘記に興味があれば面白かろうが、自分の心の琴線に触れる表現はなく、最後のオチも違和感を残した。

発行部数200万部は「ノルウェイの森」に匹敵するそうだが、それほど面白い内容ではないよなぁ、というのが率直な感想

同じ、文藝春秋に掲載されてた塩野七生氏の「なぜドイツ人は嫌われるのか」のエッセイが印象的

借金は俺達のように汗水たらしてちゃんと返せという勝者ドイツ人のギリシア債務問題への余裕の無さは、馬鹿正直で騙されてきたドイツ人の猜疑心の裏返しとの説

カトリック教会の免罪符詐欺に怒りプロテスタントを立ち上げたドイツ人ルターにその歴史は遡ると。また、最近では300ユーロ偽札事件でドイツでは数万ユーロがさばけたとヨーロッパでは笑いのネタにされたそうな。

イタリア贔屓の塩野氏らしいコメントではあるが、ドイツ人のあの融通のきかなさを思い出させる話ではあった