「恩納村のシーサイドドライブイン」ドキュメント72時間より

金曜日の夜に家にいると見てしまうNHKのドキュメンタリー番組「72時間」

ある特定の街のスポットに集う人々を72時間撮り続けてインタビューする、ただそれだけの番組なのだが、事実は小説よりも奇なり、ということわざの通り、街の人々のインタビューから浮かび上がる、ひとりひとりの人生が印象的だ

昨晩は、沖縄恩納村付近で40年前から営業しているシーサイドドライブイン
そこを訪れる人達が語る物語

1967年開店というからまだ通貨紙幣がドルだった復帰前の沖縄の頃に創業

当時、20代だったという老夫婦が昔と変わらぬ味を求めて訪ねてくる。駐留を終え帰国する交際相手の米軍人を追って単身米国に渡たり結婚したという妻。若い頃は怖いもの知らずだったと振り返りながら、夫とふたり、今は幸せそうだ。

若い頃に東京で水商売で働いていた男性は、復帰後沖縄に戻るが、仕事は基地のなかの工事。母親は米兵家庭のメイドをしていたという。辺野古基地建設反対と世間は言うけど、基地無しでは仕事が見つからない、その心情を語っていた。

先祖の土地が米軍に奪われたという老夫婦
でも、その土地に今もあるウガンジュ(先祖を祀った森)は今も往時の姿そのまま残されている。ドライブインの窓から見える、美しかった海辺は開発によって失われていくというのに、基地の中に残された事で守られている自然を複雑な思いで語っていた。

50代のハンバーガを買いに来たハーフ顔のハンサムな男性は、父親を知らず、母親もその事を語りたがらないという。出生にまつわるどんな経緯があったにせよ、子供時代の彼は周囲の人々に温かく見守られて育ったという。沖縄の人は「いちゃりばちょーでー」だから、と語る彼の言葉が印象的。

車いすを出すのが大変だからと駐車場でハンバーグをぱくつく老婆(90歳?)。その娘が口にしたのは、宮森小学校米軍機墜落事故、彼女の兄弟は難を逃れたものの、18名の命が失われたこの事故を勉強してきてくださいね、と取材陣に語る言葉が突き刺さる。

週末に基地の米国人家族を連れこのドライブインに集う米国人宣教師の一行。
正義の戦いのために米軍基地は沖縄には必要、日本は米国と共に戦うべきと熱く説く宣教師の妻

真夜中のドライブインに集う男女4人
知り合ったきっかけは愛知県の車工場での季節労働。その後、沖縄に戻るも、仕事は簡単には見つからずドライバーの女性はフリータ。職はなくても仲間と一緒にいる彼らの姿は楽しそうだ

人気メニューは創業以来変わらぬ味のホームメイドスープ
豚骨ベースのクリームスープは、本土では味わえない故郷の味と若者は語り、その変わらぬ味に老人たちは昔を偲ぶ

基地に経済が依存する沖縄。辺野古での基地建設は、3万人もの反対派の集会が開かれると同時に、地元では賛成の声もあると聞く

失業率、離婚率、共にNO.1の沖縄
でも、そんな数字とは裏腹に人々の助けあう心が残っているためか、そこに暮らす人々の表情に暗さはない

たった3日の取材なのに、これほど話のネタが尽きぬ場所も珍しい

沖縄という濃い土地柄に触れることのできたドキュメンタリーでした