シンプルに考えればいいだけの事さ

仕事のことで、不安なんですと部下が言った
あれも、これも決まっていないし準備ができていない事に対して

彼と仕事をするようになったのはここ三か月のこと
以前担当していた仕事は手順もきっちりと決まっていたので、マニュアル通りに進めれば良く安心していられたのだと

マニュアルに書かれた通りにやる仕事って面白くないと思うんだけど、彼には今の状況とこれからの見通しについて説明した。

理解してもらえたのかと思っていたら、徐に、こんなにいろいろ決まっていないのですと10以上項目を挙げて、メールを拡散し出した。
そっか、まだ納得できていなかったのね。

それで、また聞いてみると、(僕はメールで問いかけはしない、口頭で確認することにしているので)、システムが分からないと言う。

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村上春樹エルサレムのスピーチで
「壁(システム)と卵(人間)の共生」に触れた時から、このシステムという語感について考えるようになった。

システムとは
映画マトリクスのような巨大な虚構
自分には理解のできない決まり事(政治とか経済とか)
元々は人間が生活を豊かにするために作り出したのに、こけた時には大きな災いをもたらすもの、原発とか

理解できないシステムを前にすると、人々は盲目的に信じるしかなくて、思考が止まってしまう。

でも、どんなに複雑にみえるシステムだろうと、本当はシンプルに理解できるのだと思う

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「Think Simple」というアップルの広告代理店を勤めた著者の本によれば、スティーブ・ジョブズという人は徹底的にシンプルさにこだわったらしい。

マウスのボタンが一個だったり、iPadを使った時のページめくりとか、アップル製品のシンプルさへのこだわりは、使っていて心地よい。

「その機能無くして売れなくなったらどうするの?」という質問に毅然と答える自信が無いと、機能をそぎ落とすという事は、とっても難しい。結果、ボタンだらけのTVリモコンが出来上がる。

ちなみに原題は『Insanely Simple』だそうだ。『Only the Paranoid Survive』もそうだけど競争の激しい世界で生き抜く、というのは、こういう事だ。

シンプルになる、シンプルにする、というのはそれなりの決意のいることだ

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不安を抱える人を見ていると物事を難しく捻り過ぎて、言葉が過剰になっている気がする。話していると語彙が豊富、というよりも、思考が散ってフォーカスが定まらない印象を受ける。

最後の素粒子ヒッグス粒子が発見されたというけれど、すべての物質はたかだか17個の素粒子からできているほどシンプル

10も問題をリストアップするより、たった一行の言葉に集約できたら、彼の不安も解消されると思うのだが。