街のあかりと焚き火

節電のためだろう街の明かりが以前より落ちているという
路線によっては混まない時間の車内の照明が消えている
暗いと気持ちが沈みがちになるものらしい

村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』に収められている「アイロンのある風景」という短編集を思い出した。夜中にたき火をするために茨城の海岸の近くに移り住んだ男が出てくるお話。彼とたき火を囲みなが語る順子という女性の言葉印象的だった。「自分がからっぽなのだと感じる。」とかって。

闇の中にゆらぐ炎をみつめていると不思議な気持ちになってくる。
雑念が取り払われていくようで、だから闇夜もそんなに僕は嫌いではない

この夏は25%の節電が義務付けられるそうだ
僕が仕事を始めた80年代はオフィスの照明は暗かった
というか、倉庫として使われていたと言い伝えられていたあの6階建てのビルは、空調のダクトはむきだしで、高い天井の蛍光灯が机まで届かなくて、ひとりひとりの事務机には蛍光灯が付けられていたものだった。ぼろいビルだったが、いくつものイノベーションが産まれた場所だったと思うと、どこかなつかしい。

暗闇はそれほど忌み嫌うほどのものではないし、明かりがなくったて、志があれば、またあらたな文明は生まれる。今は夜明け前の闇なんだと思えば。