仕事の場での優しさは人をスポイルするかも

中学校を卒業する時、記念にと思って、僕あてに寄せ書きを書いてもらった。クラスの女の子からの「その優しさを大切にね」と言うコメントを見ながら、自分は優しい男と思われているのだなと思った。

『成功する男はみな、非情である』という本を紹介してくれた友人がいたけど、20年の会社勤めを経て、確信したことは「いい人」と部下から慕われ、かつ出世した上司はいなかった、という事実。顧客のニーズをつかみながら、競争を勝ち抜く事を余儀なくされている民間企業において、情に流される人は組織の成果を上げるという役割を担うマネージャーにはきっと向かないのかな、漠然とそんな事を昔思った。


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という妻が借りてきた本を今日は読んでいた。
ひと言でいうなら、面白い。思わず肯いてアンダーライン引きたくなる、(借物だから引かないけど、その代わりにつぶやいたけど)ところがいくつかあった。

一部抜粋すると
組織構造は、組織の中の人間や組織単位の関心を、努力ではなく成果に向けさせなければならない。成果こそ、全ての活動の目的である。職人的な技能それ自体が目的であるかのごとき錯覚を生んではならない。

書いてある事は当たり前の事でありながら、それを実践できるマネージャーは少ない。
残業の多い、一生懸命仕事をしている部下は、成果が上がらなくてもその努力を評価してあげたくなるもの。技能を磨く事は組織の目的ではないし、上司にゴマをする事も目的ではないけど、成果を意識して仕事を部下にさせる、それは容易な事ではない。普段話す言葉、ひとつひとつが部下のモチベーションを左右している事を思えば。

自分自身の仕事の成果を意識しだすとグチを聞いて同情してあげる、という優しい気持ちにはだんだんとなれなくなってくる。自分で考え抜いた上での相談事なら耳を傾けるけど、思い付きでの質問におつきあいするのは自分の時間が惜しい。

最近の自分、仕事の場では人に冷たく接しているかも知れないな。
会社が楽しい場所だったら、守衛のいるゲートで入場料とるぞ、ディズニーランドみたいに、と言ってた常務がいたけど、たしかに会社はレジャーランドとは違うもんね。

愛想が悪くて、何が正しいかにしか関心がなくて、尊敬される人。もし身近にそういう人がいるなら幸運だと思う。
真摯に仕事をしようと思ったら、愛想を振りまいてばかりもいられない。自分がミスをしたのに笑っているのはなぜ?相手のミスを笑って許す優しさは自分のミスを責められないための予防線。仲良しクラブは居心地がいいけど、日程は守れないし、人も育たないと思う。

真摯に仕事に向かったら、笑ってられないのよ、ほんとに。
家庭的な雰囲気の職場という言葉もあるけど、家庭と職場は一緒にはできないなぁ

仕事に「優しさ」を持ち込んじゃいけないよな、と思う今日この頃。