40歳は人生のひとつの節目だったと振り返って思う人に

40 翼ふたたび (講談社文庫)

40 翼ふたたび (講談社文庫)

人生終わりと思っていたら、40歳が始まりだった。石田衣良
という本の帯の言葉にひかれて買ってみた『フォーティ 翼ふたたび』

男性なら42歳、女性なら33歳、厄年の前後には人生のターニングポイントだったなと後から振り返ると気がつくようなイベントが身に降りかかるもの。
大手広告代理店を辞め、先輩の起こした小さな代理店に勤め始めたものの、小さなゴミのような仕事しかこないと嘆く主人公吉松。仕事のPRのために、40歳から始めよう、なんてテーマでブログを始める。

顧客の多くは40歳になって仕事の挫折や人生でつまずいて彼の元を訪ねてきた人達

スキャンダルで会社を乗っとられたIT会社社長とその愛人のAV女優
銀行の合併によって、同じ支店で働くことになり、支店長にいたる副参事のポストを巡って競いあうことになってしまった高校時代の同級生ふたり。うち一人は妻から離婚を切り出されていて。
高校三年の時から40歳になるまでずっと部屋にひきこもったままの長男の社会復帰を願う老夫婦。
高級住宅街で幼児の送迎をビジネスとして始めた中年フリーター。
末期の肺癌を患う同僚と、彼を慕い結婚し子供を願う十数歳下の女性。

主人公の吉松は、彼ら顧客の物語をブログに書き続け、その物語をミドル向け雑誌の創刊イベントとして劇にすることを企画する。日比谷公園の野外ステージで、顧客自身によって彼らの物語を演じてもらうという大イベントがこの本のフィナーレ。

この本にも書いてあったけど、40歳をすぎると、若いころよりずっと自由に言葉を扱えるようになる。下手は下手なりに文章が書けるようになるのは、自分自身を見る目が変わってきたからなのだろうな、と思う。

できることとできない事がわかるようになるから、身に余る夢をもち、自分に過重な期待をかけることもなくなる。夢がないと言えばそれまでだけど、本心では望んでいないものを追いかけて身近な幸せを見落としてしまう方が不幸だし、幸せの見つけ方はひとそれぞれ。

この本、40代の人は共感を持って読めるのだろうな。
それより若い人はどうなんだろう。
つまらんと言って若い頃の自分なら放り出しいたかも知れない。