JALの倒産は他人事じゃない

株券は紙くずになったし、従業員の1/3の1万5千人が整理されるというし、既に退職した元社員まで年金が削減されるという過酷なJALのリストラ案。海外に行くのならもっと格安の航空会社があるし、そもそも飛行機なんて滅多に乗らないから、社員の方に同情はするけど、私には関係ない。それが大方の普通の人達の感想。僕自身も今となっては、寂しいという気持ちはあっても、やむを得ないのかなと思っている。

社員の多くは真面目に、言われた事をちゃんと真面目にやり、自社に誇りと愛社精神をもって、職務を遂行していた。そして、多くの日本の企業と同じく、社員に厚く(社宅や厚生施設も充実してたし)、だからこそ、半額を会社が負担するという積立年金もあった。社員持株会も3700万株あるというから、1株200円とすれば、時価総額74憶円。加入していた従業員が1万人としたら、ひとりあたり74万円を失うことになる。

いつかきっとまた復活するよ
そう信じて痛みを伴う改革は先延ばしにして、ある日突然、預けておいた資産までもが失われる。

その姿は今の日本の経済状況と同じ。
政府がばらまいた手当を受け取って、その原資となる国債を買っているのも、同じ日本の国民。自国の国債を買うというのは自社の持株会に入る、という事と同じこと。歳出の穴埋めのため発行した国債残高は、ある日金利が上がってしまったら、あっという間に膨らんでしまう。その借金の返済は消費税増税しかない。海外に雇用を移転している企業を悪者扱いして、海外での工場展開に足かせをはめたり、法人税を上げてしまったら、外貨を稼いでいる日本の企業は競争力を失う。その結果、円は昔の1ドル=360円になっているかもしれない。

消費税20%、1ドル=360円。となったら、高いガソリン代を嫌って車を持つ人は減り、輸入品の値上がりで食料品も高くなる。相対的に海外より賃金が安くなるので、中国企業が日本に工場を作って雇用してくれるかも知れない。そういう未来を望むなら、手当をばらまいて人に優しい(甘い)政治もいいかも知れない。

堺屋太一の「平成三十年」という小説はそんな未来の日本を描いた作品。仕事の引継ぎはフロッピーディスクの受け渡しという記述にはちょっと笑った、さすがの堺屋先生もネットワーク時代は予知できてなかったのだろう。高い税金や日本の激しいインフレについての描写は、もしかしたら現実のものとなるのかも。

今の日本、技術力は高いし、識字率も高いし国民の知的水準も高い、英語力が無いのと、したたかさに欠けるのは世界で競争する上ではハンディだが。とりあえずは「友愛」、それでいいけど、甘やかされたら競争には負ける。弱者を助けるためにも、競争に勝ち、稼げる産業を育てる、その事が次のステップとしては重要である、という事は言うまでもなかろう。