世界報道写真展2008

戦場となったアフガニスタンでの兵士や住人、運ばれるマウンテンゴリラ、プーチン、1/4の子が幼児期に性的虐待を受けているスペインの話、TVに見入る人々、商業主義的テーマパークで余暇を過ごすイタリア人、スポーツとしてのハンティングのため銃を構えるアメリカ人の子供、バングラデッシュの元首相ブット氏の暗殺の現場、いろいろなモノクロ写真は印象的だったが、一番心に残ったのはミャンマーで亡くなった報道カメラマンの長井健司さんの撮った30分の映像かな。

タイのエイズの子供達の面倒を見ている日本人、パレスチナの海岸で殺された罪なき人々、イラクでの市街戦でやけどを負った少年、どの映像も生々しくて、また、長井さんの、どちらかと言えば拙いナレーションが映像が加工されていない事を示唆しているかのようで印象的だった。彼は報道カメラマンだから取ってきた映像をTV局に売って生計を立てていたのだろうけど、TVのニュースで報道される世界中で起きている事件というのは局側の脚色が入ってしまっている。アナウンサーの紋切り型のコメントというのもいささかうっとおしかったりする。

だけど、この展覧会で流されていたビデオは事件に遭遇した人々の声が日本語に翻訳されていない分、よりリアルな声として伝わってきた。ミャンマーで命を奪われた長井さんの仕事場に飾られていた花束はどれも物悲しく、未だ彼が臨終の間際にとった映像だけでなく、カメラすらもミャンマーから返却されてはいない事を思い出させる。

報道カメラマンというと、もっと激しい気性の人かと思ったけど、淡々として現場を映像として切り取り、事実を世界に伝えようとする、そんな命がけと思える仕事をやっている長井さんの人となり伝わってくる映像だった。

今日は午前中、ちょっと時間ができたので、恵比寿まで足を伸ばしてみたけど、その甲斐はあった。TVでは伝えきれない真実というのはあるのだろうし、お金を払ってでも見てみたい報道の真実というのに触れみたい気がしている。