「パラダイス鎖国

海部美知さんの造語「パラダイス鎖国」、これがタイトルとなっている本が出版された

消費者向け商品を売っている日本の企業は、機能性能にこだわりの強いの日本のお客さん向けに品質のいい物を作って、それを海外にも展開して業績を伸ばしてきた。自動車産業がその典型だろう。首都圏だけでも5000万人もの消費者を有する日本。比較的まとまった地域に同じような志向を持ったお客さんをターゲットとして商品企画、マーケッティングを展開すればそこそこの規模の大きいビジネスとして成り立つ。時折山手線の車両を貸しきった広告を目にする事があるが、これなどは典型的な顧客ターゲットを絞った商品広告戦略の一例だと思う。

この5000万人程度の日本の消費者向けの事業展開で成功していたのは90年代の終わりごろまでだろうか。ところが、今世紀に入って、資本主義化した中国を初めとするグローバルマーケットが登場したことで事態は一変する。その規模たるや桁が一つ多い5億人。多くの日本企業は5億人のマーケットに目を向ける事無く国内のマーケットから意識が抜け切らない。著者はこのような様相を称して「パラダイス鎖国」と呼んでいる。国内マーケットにとどまって、携帯キャリアのご指示どおりに製品を作っておけば、外資企業も簡単には入ってこないし、ここはパラダイス。

こうして、日本の携帯電話端末を作っているメーカは、この10年でSCやLGといった韓国企業に、その規模において圧倒的に差をつけられてしまった。最近では、Dが撤退、昨年はSAがKに吸収合併、HとCAはすでに合併してしまったし、SOは既にSEになっている。北米のMも売却の噂があって、日本のPかSHが買収かなんていう記事も目にする。

ここまでは、携帯電話端末を取り上げた一例に過ぎないが、昔に比べて日本人は海外に目が向かなくなって(ハワイより温泉?)、うちにこもっているように見えると著者の話は続く。

HEROES/ヒーローズ」に見る日本人
「内なる黒船」を量産する「ぬるま湯」
「ジャパン・ナッシング」現象
… などなど

なかなか、面白い本でした。