週末に放映されたNHKスペシャル激流中国「密着 共産党地方幹部」

これは面白かった、印象に残っているので備忘録として書き記しておこう

中国の地方行政は 省-市-県-郷 という階層で構成されていて、30万人程度の人口の"郷"を仕切っている二人の共産党書記の活躍ぶりが紹介されていた。

紹介された二人の幹部のうち最初の一人は中国南部の農村部の工業化を進めていて、彼は中国共産党本部から経済成長のノルマを課せられ、その分大きな権限も持っている。工場の寮を訪ねたその幹部は繁華街にでるための最終バスを遅くして欲しいという労働者からの要望をその場で聞き入れ、直ちに携帯電話で最終バスを7時から9時半にするようバス会社に指示してしまう。細川護熙元首相が県知事だった頃、熊本市のバス停を30m移動するのに運輸省にお願いにいったという逸話があるが、官僚の権限が強い日本よりよほど一党独裁の中国の方が地方への権限委譲がすすんでいるという好例といえよう。

さらに、党本部の決めた突然の関税引き上げにより地元工場への負担が増えるのを抑えるため、ただのスパナをハイテク製品に指定できないかと徴税の担当者と彼は掛け合ったり、環境対策等地元の発展のために働くのを惜しまない。

もうひとりの幹部は中国東北部の農村部を統括していて、つぶれた国有工場の整理とその跡地への新しい工場の誘致、国有工場周辺の社宅に居座る住民の立ち退きを自らやっていた。

立ち退きを拒絶していた夫婦は借金15万円+娘の学費15万円を抱え断固として動こうとはしない。そこでその幹部は公的に決められた立ち退き料に寄付金を上乗せする事を提案、共産党幹部らによる寄付により集まった4万5千円(年収の半分に相当)を加え立ち退き交渉は成立する。立ち退き料を寄付により集めるというのも異様だが、この夫婦にしてみればごねてもらえるものならも貰っておこうという事なのだろう。いやはや、まったく中国の人達は商魂たくましい。

中国ではこうした形で現場での裁量により次々と行政上の判断が下されていく。その事が結果として年間5千人もの役人が収賄で逮捕される事になるとしても発展のスピードを上げる手段として今の開発独裁とも呼べる政治のありかたが必要とされているといえる。

どうやって投資を呼び込むのか、どうやって有利な条件を引き出すのか、地域の発展に活躍する共産党幹部と会社経営者とのかけひきも見ていて面白かった。

共産主義と資本主義がなぜ両立するのか、ダイナミックな中国の地方の発展の様子をわかり易く報道していた良い番組であった。