/// 痛快!憲法学 「第十章 ヒトラーとケインズが二十世紀を変えた」 より

7/15からの続き

  • この章に書かれていること

参議院選が始まって、民主党は議会制民主主義による二大政党制を実現すべきと訴える。資本家対労働者という対立は既に遠い過去のもの、今二つの政党を特徴付けるとしたら「大きな政府」と「小さな政府」とどちらを選びますかという事だろう。増税して厚い福祉と公共事業に投資する「大きな政府」、規制緩和を進め、外資導入で競争を促進して国の役割は最低限に抑える「小さな政府」。

前者の施策を支持する政治家をケインジアンと呼び、後者の古典派経済学が全盛だった第二次世界大戦以前はケインズ流の施策は全く受け入れられなかったというのがこの章の主題。

  • あらすじ

☆ 古典派経済学
民主主義哲学の出発点となったロックの社会契約説は同時に国家は経済に関与すべきではないという経済思想も生んだ。その思想はアダム・スミスの『国富論』により科学として証明された。自由放任を是とするこの学問は古典派経済学と呼ばれる。

☆ 大恐慌当時のアメリ
当時の大恐慌は、米国での失業率25%、潰れた金融機関への預金は保護されることなく、路上生活者が溢れていた。こういうときには、古典派経済学は成り立たないと指摘したのがケインズ。彼は需要が供給を作ると考えた。大恐慌有効需要が小さいため起こった。

☆ 有効需要とは
有効需要とは消費と投資の合計 極端にいえば失業者を集めて大きな穴を掘ったり埋めたりしても公共投資により景気は良くなる。例えば、1兆円の公共投資をすれば、そのお金は企業や個人の懐に入り、そのお金がまた使われるので、波及効果により消費性向(懐に入ったお金を消費使う割合)が0.8であれば5兆円の需要をもたらす。

☆ 現実の政策は
ところが、実際にはケインズ流の公共投資をしようとしたルーズベルトでさえ、その政策に違憲判決が下り十分に実行はできず、アメリカ経済が復活したのは第二次世界大戦の軍需のおかげだった。当時、公共投資による不況脱出を実現できたのはヒトラーで同時にインフレを金融政策により抑えることにも成功した。

☆ 日本でケインズ流の経済政策がうまく行かないわけ
ケインズ有効需要を増大させる手段を二つ挙げている。一つは公共投資。もう一つは利下げによる民間投資意欲の刺激。しかし利子率を下げすぎるといかなる経済政策も動かなくなる(流動性の罠)。政府介入を長く続けると経済の自由が失せ社会主義になってしまう。例えば、日本の土木業界のように。

☆ 日本はどうすれば
日本は既に社会主義の国だから、規制緩和をしても効果は知れたもの。日本を救うには民主主義と資本主義の精神を復活させ憲法が働くようにしなければならない