/// 痛快!憲法学 第8章 「憲法の敵はここにいる」 より

6/14からの続き

☆ 民主主義と呼ばないわけは?
ギリシア時代のプラトンアリストテレスの作ったスコラ哲学でも指摘されているように民主主義は衆愚政治に陥るので最悪の政治だと長いことヨーロッパでは考えられていて、独立戦争後のアメリカでさえ、民主主義とはいわず自らを共和制と呼んでいました。民主主義が市民権を得たのはようやく第一次世界大戦ウイルソン大統領の時からです。

☆ フランス革命後の民主主義が生んだ独裁政治
宗教戦争終結のため1598年ナントの勅令により、フランスではカトリックプロテスタントが和解、ユグノープロテスタント)の活躍により、フランス経済は活性化しました。18世紀初頭絶対王政太陽王ルイ14世の下ベルサイユ宮殿を中心に華やかな宮廷文化が栄えるますが、ナントの勅令を廃止したことにより、ユグノー達はプロイセンに亡命、フランスは没落していきます。そして起きたのが「自由」「平等」を求めたフランス革命。この革命でロベスピエールは「民主主義の敵を抹殺せよ」とばかりに数万人の政敵を粛清してしまいます。彼の求めたのは「結果の平等」であり今風にいえば共産主義です。近代民主主義では「機会の平等」をこそ守られるべきものと考えられています。
そして、1804年には共和国の皇帝ナポレオンが誕生します。

☆ 好景気をもたらす独裁政治
このように民主主義は国民の歓呼と共に独裁者を生み出す格好の温床となります。ナポレオンやヒトラーのような独裁政治下にある国は景気がたいへん良かったのです。ナポレオン法典は近代資本主義の基本法ともよべ、契約の絶対と所有権の絶対をこの法律で保護したことで、フランスは急速に資本主義化しました。結局のとこ、民主主義のような効率の悪い政治よりは独裁政治の方が良い景気をもたらすといえるでしょう。
民主主義の国米国では、大統領の権限が強いので、非効率な長期にわたる選挙戦を行っています。長期の選挙戦の間に候補者のアラが暴露されて、一時的な熱狂による独裁者が現れるのを防ぐためです。

    • 感想 --

この本『痛快!憲法学』小室直樹著 が出版されたのは2001年春の事で、経済の長期低迷、進まない不良債権処理の日本でも独裁権力が現れる可能性があると本書で指摘しています。その後の小泉政権の登場を予言していたかのようですね。