/// 痛快!憲法学 第7章 「民主主義のルール」とは何か より

6/5からの続き

☆ イギリス議会政治の基本ルールを確立した政治家 ディズレイ−リ
「公約を破ったら下野すべし」
言語も宗教も異なるアイルランドをイギリス人は16世紀ごろから侵略、19世紀中頃にアイルランド馬鈴薯病が発生し数十万人の餓死者が出ました。生き延びるために多数のアイルランド人が北アメリカへ移住しています。小麦の収穫量が減り穀物価格の安定を図るため当時のピール内閣は穀物法の廃止を提案。ピールが『穀物法を守る』という選挙公約を破るのであれば下野すべきというディズレイリの議会での演説が支持を得、多数派のピール内閣は倒れます。このようにして、議会における論争により全てを決めるという事がルールとして確立したわけです。

☆ 契約とは何か?
近代デモクラシーの大前提は契約を守ること。日本人が考える義理堅いとか約束を守るという事と言葉によって明確に定義された契約とはまったく異なります。破ったかどうかが明確に判定できるものが契約です。
多民族国家の中国で契約書が発達しなかった事からも分かるように、異民族同士の融和のために契約が必要とされたわけではありません。

☆ 旧約聖書には何が書いてあるのか?
欧米人のエートス(行動原理)は聖書とキリスト教に依っています。
新約聖書というのは新しい契約という意味で、旧約聖書には古代イスラエル史が書かれており、神様との契約をやぶるとどんなひどい事が起きるかという事が書いてあります。

奴隷となって迫害を受けていたイスラエル人は預言者モーゼに率いられて、エジプトを出て「十戒」という契約を神と結びます。しかし、ダビデの子ソロモン王は異教徒を崇めて神との契約を破り、イスラエル王国は衰退、イスラエル人は奴隷となります(バビロン捕囚)。この神との契約を無視した苦い教訓から強固なユダヤ教の信仰が生まれました。そして、「神を信じ、神を愛し、隣人を愛せば、神様が救済していくる」と神との契約を改定したのがイエス。こうしてキリスト教が誕生しました。

アラブ(イスラム教)にも中国にも契約は絶対であるという観念は無いので、近代民主主義も資本主義も生まれませんでした。

    • 感想 --

欧米では企業で働くときにJob Descriptionを書くのが一般的らしい。私のお仕事と役割はこれこれですという事を明文化する。そして雇用主(ボス)との間でCommitmentを交わすとか。
この考え方の根底にもキリスト教がもたらしたエートスがあるように思える。実力主義と称して形だけを真似てみても日本ではうまくいかないのかも知れない、外人社長の某自動車メーカのように。