梅雨の晴れ間、出雲を巡る旅

一日休みを取って週末に出雲を訪ねてみた

日本海側ってほとんど足を踏み入れた事がなく、山陰地方は初めて
鳥取県島根県って、どっちが右だったけと、地元の人にはホント申し訳ないけど、行ったことの無い場所というのはどちらがどっちか見当がつかない

早朝の羽田を立って一時間弱のフライト
レンタカーを借り、松江城の堀を小舟でめぐり、境港では地元客で賑わう店で山盛りの魚介を食し、足立美術館の庭園に見惚れ、紅葉館という山寺の宿坊といった佇まいの宿屋で一泊。
翌日は石見銀山に足を運ぶつもりだったものの、気が変わり、出西窯にて陶器の工房を見学、午後は出雲大社を詣でた後、夕方の便で帰宅。

一泊で巡るには見どころが多く、延泊できていればなぁと後悔が残った

泊まった紅葉館

森の中にある清水寺の境内と繋がるその宿は、駐車場に車を止め参道を登ること10分
その日の泊り客が私達だけだった事もあるのだろう、戸を開け、玄関先で呼びかけたものの、しばし返答はなく。
にこやかに現れた普段着姿の旦那からは、おもてなしよりも、くつろぎの予感が読み取れた。
トイレも風呂場も共同で、古い木の建物の持つすえた匂いも鼻につくのは始めだけ
田舎のばあちゃんち、キャンプ場のバンガロー、そんな記憶を呼び起こされるのも風情のひとつと感じられた

初めての精進料理は、お酒と相性良く、胃にもやさしい印象
食後、窓を開け放ち、闇夜に浮かび上がる三重塔を眺めながら森の息を吸う

梅雨の合間の奇跡のような晴間が続いた週末
前日までの雨で濡れた木々から伝わる匂いが伝えた森の気配

翌朝、食事前に境内を散策
樹齢千年といわれる杉の木がそびえる石段を登って行くと、本堂と三重塔とが近づいてくる。
誰もいない境内、参拝の後、トイレ掃除の老婆にご挨拶
声をかけられた事がとっても嬉しかったらしく、彼女の物語がとめどなく言葉となって私達の足を止めたままにしていた。

結婚して10年で夫が脳梗塞で亡くなった事、女手一つで子供を育て今は孫が遊びに来てくれるという事、人と人とがふれあう事は大切ですね、と「縦の糸と横の糸」という歌を例に上げて説いていた事、などなど。

宿の旦那も話し好きで、料理の説明にとどまらず、この宿にはスイスから外人さんが来て、彼女はベジタリアンだったから精進料理がベストチョイスだったとか、旦那の話は、箸を持つ手が止まってしまっていたので、この時には足ではなく、手が止まっていたのだが

山陰地方の言葉の持つ柔らかさが、耳を傾けずにはいられない程、心地良い。

こんな調子で出雲の旅日記を書き始めたのだが、宿の話だけで、こんなにも文字数を費やしてしまった

非日常の旅先での会話、その良さを再確認した旅でした