中央線沿線の都市の風景から見えてくる未来

何年かぶりに中央線に乗った

中央線快速と総武線の違いが今も呑み込めていなくって、この電車に乗る時には路線図を何度も確認したくなる。まぁ横浜方面だって、東海道横須賀線だけの時は良かったけど湘南新宿線はどちらのホームに停まるか分かりにくいので、土地慣れぬ人にとっては難しかろう。ましてや、みなとみらい線が、東横線営団地下鉄東武線、と連結するに至っては、戸惑う事無く乗り継ぐのは至難の業だ

中央線の車窓からの風景は軒をぶつけあうようにして隙間なく並ぶ戸建が驚きで、ロンドン周辺の高速道路を飛ばしている時に見えた、ゆったりとした家並みの続く田園風景と比べ、なぜこんなにも肩寄せ合って住まねばならないのだろうと考えてしまう。

おそらくは、庭付き一戸建てが憧れとされた昭和の価値観の残滓

サザエさんに象徴される家族の団らんと奥様は魔女に感化された欧米への憧れとかが深層心理にあって、財布と相談し現実的な落としどころを見つけて出来上がった町並みなのだろう

バブル時期に高値で住宅をつかまされ戸建の幻想から目の覚めた日本人は、利便性が高く働き場所に近く文化施設へのアクセスも容易な高層マンションを買い求めるようになったのだなと先週訪ねた豊洲の住居群を見て思った。

これが平成の価値観か

これら高層マンション群の出現は大規模な土地を所有していた製造業が安価な労働力を求め海外に移転し土地を手放した事が背景となっている。

本来ならば、沿線の低層住宅を集約し高層化すれば、より多くの人が便利な生活を享受できそうなものだが、戦後の農地解放以降、土地への強い執着を持つ農民のメンタリティが身についているのか、土地を手放す人は少なく、一方、高齢化や居住者の死去に伴い、杉並区あたりでは人の住まない空き家が増え問題になっているのだとか。

いづれ六本木ヒルズのように低層住宅を集約してオフィスと住居が混在した街として生まれ変わるのだろうか。いや、それ以前に大地震が襲って街の風景が一変してしまうのかも知れない。

M7級の首都直下地震が30年以内に70%の確率で発生すると予測されている関東地区。先の東日本大震災では、停電と交通網の麻痺が首都圏を襲ったものの、今はもう、あの日を忘れてしまったかのような通勤電車に揺られる人々の顔がある。

電車を走らせながらの工事が続く新宿駅、都市のターミナル駅は増加する人口への需要に答えるべく整備が進む。地方の過疎化と都市への人口の集中。

東京都の予算規模13兆円はスウェーデンの国家予算と並ぶという。この週末に執行される都知事選。都民は誰を、大統領並みの権限を持ったこの首長として選ぶのだろう