シンプル イズ ビューティフル

植田正治という写真家が鳥取境港市に写真館を構え、鳥取砂丘を舞台としたユニークな映像をいくつも残している。

モノクロの写真は色が単調な事で、かえって観る者の想像力を刺激する。この作品、タイトルは、

「ボクのわたしのお母さん」

植田正治の妻と4人の子供達をモデルとして撮られた作品
家族の暖かさが伝わってきて、子供たちの声が聞こえてきそうな作品

また、彼は、フィルムを縦長に引き延ばしてみたり、フィルムの表面に油を塗ってみたりと、様々加工を加え、芸術写真と呼ばれる新しい表現方法にも挑戦していたという。

ある写真家の友人が語っていた。
昔はフィルムを現像する時やプリントする時に手で丸く作った影で光量を調節して淡く濃淡をつけてみたりと、アナログ的な技巧で写真を仕上げる事ができたのだとか

デジタル全盛の今、フォトショップやらなにやら、パソコンのソフトを利用すれば、同様の事はきっとできるのだろうと思う。

しかし、マウスでなぞるのと、自分の肉体で光を調節するのとでは、その温もりや加減の加え方に大きな差があるように思える。

シンプルな映像っていいなぁ、と某国営放送を見ながら感じていた。

佐藤オオキというデザイナーがいる

オフィスレイアウト、缶ビールのパッケージ、椅子、時計、桶、照明、と様々なデザインを手掛けているのだが、彼のデザインに共通するのは、小さな「!」



誰も気が付かなかったけど、デザインとして提示されると、なるほどな、と思わせる気づきのあるデザイン

その番組の中で紹介された彼のオフィスは一面「シロ」
デザイナにとって着想を得るには、先入観や思い込みをまず消し去る事、なのだろう。

白いキャンパスが常識をゼロリセットして創造の土台となっているようにみえた

最近始めた仕事は、simpleだけで省エネでスマートで人に役立つ事を目的とした開発。

それは、ある同僚が、ギガバイトだ、ギガビットだと、大きい事は良いことだ信じていろんな物を作ってきたけど、でも、五七五の俳句に、その価値において負けてるよね、と言い出した事に端を発している。

ビット当たりの単価はコンパクトディスクの登場以来、どんどん安くなって、気が付けば、おまけとしてタダで配られるようになり、万葉集のように語り継がれる事もなく、ただ消耗され、捨てられていく音楽やドキュメント類。

大きさや複雑さより、小さくてシンプルで人の想像力をかきたてるような、そういうコンテンツにこそ価値があるんじゃないと、この頃思うのだった。