開店1年目のコンビニと開店70年の飲み屋と

飲み会帰りの深夜

酔い覚ましに駅の近くのファミマで買ったアイスモナカを頬張りながら、家路をたどる。夏の暑さと火照った体と、このデザートタイムはわりといい。

深夜だというのにそのお店で品物の運び込みを終えた、配送のトラックのお兄さんは駆け足で運転席に乗り込んでいた

たとえ、夜中であっても、オニギリもつまみも取り揃えている日本のコンビニ

その便利さに慣らされた私達は、万が一目的の品物が切れていたりでもしたら、すぐに隣のコンビニへと、いきつけのお店を乗り変えてしまうだろう

去年までは駅から徒歩1分のとこにファミマがあったのに、駅の隣の駐車場を地主が手放したからなのだろうか徒歩20秒のとこにセブンイレブンができて、たいして混んでいた訳でもないファミマは、お客の数は半分以下になってしまっている気がしている。

この日、飲みに行ったのは、戦後まもなく開店し、91歳の女将がきりもりする、営業は週に三日、8月はお休み、時間は5時から8時半、という飲み屋。

エアコンの無い店内は明け放した窓からの蚊の侵入を防ぐための金鳥の香りが漂い、天井の扇風機が回りながらその向きをかえつつ、ぶらさがった照明に何度もぶつかっているのに、でも誰もそんな事気にする事の無い、ゆるやかな空気の流れる、机も壁も木造のレトロな店内。

昭和の香り漂う店内は、それを懐かしむように高齢のオヤジ達で賑わう中、若いピアスをした茶髪のお兄さんもいたりして、懐かしさだけではなく、なぜか人を惹きつけている。そして、店主の孫なのだろうか、お店でオーダを取りに来た若いお兄ちゃんはどこかぎこちなく、でもそれも、どこか初々しい。

60年間も営業していたら開業資金の借金返済に追われる事もなく週三日の営業でも十分に暮らしていけるという事なのだろうか

それに比べ駅の傍のファミマの店長は借金返済前に競争相手に客を奪われ、頭を悩ます日々のような気がする

コンビニの出店数が減っただの増えただのと、景気の目安として報道はされる一方、深夜に駆け足で働けるだけの体力のある人しか雇用されず、失業者が増えている事を嘆く世の中ってどうなんだろう?

サステイナビリティとか、持続可能な社会とか、気取った言葉なんか使わなくたって、この飲み屋のように91歳のおばあが働けるお店を取り壊さない事、そして、そのお店を選ぶお客さんがいたら、それで用は足りるんではないかと思う。

便利であること、効率がいいこと、古い飲み屋壊して、ビル作ってチェーン展開する居酒屋が入ったら、本当にそれっていい事なの?

などという事を、翌日の酔いが覚めた頭で、ふと考えていたのだった

旨い酒であった…
暑い夏を乗り切るのに、お酒は欠かせない(笑)