ナスカの地上絵

この週末、国立科学博物館世界遺産 ナスカ展」を見に行ってきた。
子供の頃ナスカの地上絵といえば、宇宙人が残した足跡だとか言われていて、いつか見てみたいなと思っていた2000年前に作られた遺跡。

この地上絵、数十mのものから300m近い大きさのものまであるのだが、実際に近くで見てみても幅1m深さ20cm程度の幅で岩石を取り除いただけで何が描かれているかは分からない。発見されたのが70年前、その後マリア・ライヒェという考古学者が遺跡の傍に塔を建設、観光客が空から見ることができるようにしたという。

ナスカ展では、ナスカ時代の土器、織物、ミイラ、等が展示されていて、彼らの文化の一端を知ることができる。展示の最後のVR(バーチャルリアリティ)は圧巻だ。幅10mはあろうかという巨大スクリーンにナスカの地上絵をセスナ機から撮影された映像を元に作成されたCG(コンピュータグラフィックス)で見事に展開する。

地上絵に近づき、遠ざかり、そして最後は地上絵の傍に降り立ち、まるでナスカのその地に行ったかのような感激を提供してくれる。

しかし、そんなコンピュータ技術を駆使した映像よりも僕の心を揺さぶったのは、ナスカの人達の想像力だ。


空を飛ぶことすらなかった彼らが、どうやってあの地上絵を描いたのか。
きっと彼らは、神の使いとあがめたコンドルがどんな風に地上絵を見るのか、コンドルの目の高さから想像して、その絵を作り上げたに違いない。

日々の仕事に追われ、星空を眺めてもなんの感慨の持たない現代人より、農耕と宗教とが生活の柱となっていた彼らの方が、科学技術を駆使する我々よりはるかに想像力が豊かだったのではなかろうか。

何十億円ものお金を使って作り上げたVRバーチャルリアリティ)は古代人の気宇壮大な想像力を超えることはなかった。人の魂が作り出すリアリティ、とても機械の生み出す情報が越えるとは思えない。