/// 痛快!憲法学 「第六章 始めに契約ありき」 より

5/30からの続き

☆ 人民になぜ革命(国家をひっくり返す)を起す権利があるのか?

伝統主義的社会をひっくり返した中世ヨーロッパの革命後の社会に大きな影響を与えたのがジョン・ロックの「社会契約説」でした。
予定説 と社会契約説から生まれたのが、近代民主主義と考えてよいでしょう。ロックの思想が無ければ、合衆国独立も仏革命も起こりえませんでした。

ジョン・ロックは1632年生まれで、オックスフォード時代に自然科学を学びました。
彼は国家や社会成立以前の状態を自然状態と仮定して国家の成り立ちを考えようとしていて、近代科学(自然現象を抽象化して考える学問)に興味があった彼は、人間を抽象化することで国家とは何かを解き明かそうとしていました。

自然状態に置かれた自然人は国家や社会の必要性を感じるようになって、人間相互の契約で国家が作られたと考えるのが社会契約説です。 『統治二論』1680年。
国家を作ったのは他ならぬ人民なのだから、人民にはそれをひっくり返す権利があると彼は主張しました。

☆ なぜ財産の私有が守られなければならないか?

当時のヨーロッパでは農業以外の手段、商売やものづくりで利潤を上げていいという考え方が生まれてきていました。ロックも「富は有限ではない」と主張していました。

予定説の登場により労働こそが救済の手段であると当時のヨーロッパ人は考えるようになっていて、労働により人間が知恵を使って働けば、地球上の資源が増える。だから、働くことは社会全体のためになる。この大発見によって、近代資本主義は理論的根拠を得たわけです。

更に、労働に対する正当な報酬として得た私有財産の正当性も裏付けられ、政治は人民の生命と私有財産を守ることにあると考えられるようになったわけです。

このように、国家権力は人民が作ったものであり、人民に奉仕するためのものだから、代表を議会に送って、政府の運営を監視しなかればいけない事になります。これが、民主主義の根本精神です。

よって、民主主義と資本主義は表裏一体になっていると考えることができます。

☆ 中世の時代は富は有限と考えられていた

資本主義以前の中世とは土地フェティシズムの時代です。土地が唯一の富だから、富は有限であるという発想になります。
そこを見抜いていた織田信長は戦国時代が続くのは大名が土地にこだわっているからと考え、土地中心の経済から商品経済への移行を進めるため、商業や茶道を奨励していました。千利休を重用し無骨な部下達を茶会に呼び、芸術的関心を植え付け、武功の褒美として土地の変わりに、茶器を与えた事がこの事を象徴しています。

    • 感想---

労働により資源が増えるという発見が資本主義の根拠となっているわけですが、環境問題に直面している現代においてはサステイナブルな社会実現のためには、この考え方は改める必要があるように思えます。

また、民主主義と資本主義が一体という事になると今の中国の政治と経済との結びつきは一体どう理解すればよいのでしょう。中国は共産党一党独裁(非党員の閣僚も今はいるらしいが)なのに、経済は資本主義的、発展途上だから矛盾が表面化していないという事なんでしょうか。