「中国行きのスローボート」 村上春樹短編集 気に入った理由は何だ

  • 午後の最後の芝生

恋人にふられた「僕」、周囲からは「明るくなったね」と指摘される。丁寧な作業を褒められていた芝刈りのバイトも目的を失い、最後の芝刈りに向かう。その芝を刈った家で作業後、家の中に招かれ家出してしまった娘の部屋に案内され、「問題は・・・彼女がいろんなものになじめないことです。」と「僕」の語る一文が心に残った。

  • カンガルー通信

店頭でレコードの返品に応じてくれなかったという女性顧客のクレームを受け取ったデパートの商品管理係の主人公が、このお客さんに好意を持ちその思いをテープに吹き込んで送るという話。テープに吹き込み終えたところでこの小説は終わっている。
主人公を虜にした女性の手紙ってどんな手紙だったのだろう。文章だけで人は恋におちるのだろうか。そんな事を思った。

  • 土の中の彼女の小さな犬

シーズンオフのリゾートホテルで出会った女性が語る幼少の頃の愛犬との死別。そして高校生になって庭に埋めたその墓を掘り起こした時になんの悲しみも湧き上がってこなかった自分に彼女は戸惑う。

作品を気に入った理由を自己分析すると、自分自身の過去を追体験できる挿話が盛り込まれている話という事になるだろうか。文学作品を客観的に評論するのが仕事ではないし個人的な娯楽としての読書、楽しみ方もいろいろ。